東京SHOCKINGについて
「福岡にあるのものは大体東京にもあるよ。」
上京するときに、周りの大人から言われた。
まぁ、そうだろうなぁ。と思った。
事実、福岡に売っている物のほとんどは東京にもあった。福岡にあるお店のほとんどは東京にも出店している。というか、東京で売ってた物や店が福岡にも進出している。ということだろう。
これに関しては別になんとも思わなかった。
東京が大きい、とてつもなく大きい街であることはもちろん知っていた。福岡にあったショップや洋服、食べ物、本、スニーカー…これらは全部東京にあったし、むしろ東京には福岡の何倍ものモノが溢れていた。
別にショックでもなんでもなかった。
ある日、同じように上京してきた友達と、明大前のすずらん通りを歩いてると、通りを抜けた先の町並みと、福岡大学の近くの町並みがとても似ていることで盛り上がった。
このときも嬉しかった。実家から福岡大学はとても近い!というわけではなかったので、正直あんまり福大近くの町並みに思い入れは無かったが、遠く離れた地に自分の見たことのある光景が広がっていたことは、純粋に嬉しかった。
八王子の南口。北口とは打って変わって閑静な住宅街である。どことなく実家の近くの町並みに似てるなぁ…と思ってしばらくその辺を歩いていた。
びっくりした。実家の道路を挟んで目の前にあった茂みにそっくりの雑木林を見つけたのだ。
嘘やろ…とそのままその周辺をひたすら歩いた。
見覚えのある坂、道路標識、イチョウの木、小さな個人店のスポーツショップ、フェンスに囲まれた公園、焼き鳥屋さんまで、地元と似たような町並みが広がっていた。
このときばかりはさすがにショックだった。
だって、匂いまでそっくりだったのだ。
湿ったアスファルトの匂い、一軒家の優しい家の匂い、晩ご飯の支度をしている匂い。
場所だけじゃなくて、時間まで飛ばされたのか…と思うくらいあの日の町並みと八王子の南口は似ていた。
悲しかった。
僕にとって特別な、ここにしかない。これだけは福岡、もっといえば地元の町にしかないと思っていた景色が、東京にも広がっていた。
「福岡にあるものは大体東京にもあるよ。」
その"大体"に、あの町も、あの景色も含まれていたのだ。
地元の町は帰るたびに景色が変わっている。
よく遊んでた公園は改装された。友達が住んでたアパートはもうない。初めて自分で服を買ったアメカジと古着のお店は、どうやらドラッグストアになるようだ。
独りよがりの僕は、変わらないでいいのに。
とどうしても思ってしまう。地元の町が新しくなるたびに、代わり映えのない景色になってしまって、どんどん東京の街の真似事をしているように思えてしまう。
多分、特段田舎でも、都会でもない地方都市はほとんどこんな感じなのだろう。どんどん景色が新しくなって、どんどん東京に似てくる。
いずれ、本当にどの町も東京の真似をして日本全国同じような景色になってしまうのかもしれない。
のっぺら坊みたいで、やっぱり嫌だな。