あまのじゃくな僕について
僕はあまのじゃくだ。
変な自意識が自分の邪魔をすることが多い。妖怪あまのじゃく小僧である。
僕は漫画「ONE PIECE」を読んだことがない。
もちろん、僕が小学生の頃から「ONE PIECE」は周りの友達はみんな読んでいたが、僕はとにかく「ありきたりな奴」になりたくなくて、「ONE PIECE」を読まなかった。
当時はそれがかっこいいと思っていた。
「ONE PIECE」を知らない俺、変わってるかなぁ?
みたいなスタンスが本気でイケてると思っていた。
服を買う時ときもそうだ。
気に入った洋服を眺めていると、
「あ!それ今年のトレンドなんですよ!僕もこないだ買いましたし、みんな持ってますよ!」
とお店の人に声をかけられた。
その瞬間、さっきまであれほどかっこよく見えたこのワークシャツが急激にどうでもよくなった。
「みんなが持ってる」という事実が、僕のワークシャツへの興味を無くしてしまった。
ちなみにこの店のお兄さんが持ってるかどうかは、本当にどっちでもよかった。
「おぉ!お客さん!!お目が高い!!僕ここで500年くらい働いてますけど、このワークシャツ手に取ったのあなたが初めてですよ!!!」
とかなんとか言われていたら、間違いなく買っていたと思う。
ついこないだ「ONE PIECE」を読んだことが無いことを後輩に話したら「それはヤバいですよ。」と言って「ONE PIECE」が無料で1日何話か読めるアプリを紹介してくれた。
後輩たちが「ONE PIECE」の話で盛り上がっていたところに入らなかった悔しさもあり、
僕は初めて「ONE PIECE」を読んだ。
読んだことが無いとはいえ、これだけ有名な漫画である。正直、ある程度話は知っているし、名シーン集みたいなのも何回か見たし、大まかなストーリーやネタバレも知っていたので、あまり気乗りはしなかった。楽しめる自信がなかった。
結果、めちゃめちゃ面白かった。
びっくりした。1話目からすでにワクワクが止まらなかった。
「ONE PIECE」は面白い!!
なんて今さら改めて言うことではないのは百も承知だし、「地球は青い」と同じくらい当たり前のことなのもわかってはいるが、とにかく「ONE PIECE」は面白かった。
世間に何周差もついてしまったが、やっと僕は走り出せた。
今の僕ならなんでも楽しめるような気がしていた。
僕はワンピースハイになっていた。
このテンションで実はあんまりちゃんと聞いてこなかった「GReeeeN」と「ファンモン」も聞いてみた。
「え?GReeeeN…?とかあんま俺わかんないんよね…あ、俺、ヒップホップばっか聞くからさ…。」みたいなキモいスタンスを僕はかっこいいと思って貫いていたのだ。
「GReeeeN」も「ファンモン」もどれもアツくて良い曲ばかりだった。
しかし、「GReeeeN」や「ファンモン」のアツイ曲を燃料にして、がむしゃらになれるものが今の僕には無かった。
「GReeeeN」と「ファンモン」の僕的賞味期限は、
もうとっくに過ぎてしまっていたような気がした。
これをちゃんと中高生の部活をやっていたあの頃に聞いていれば……
自分に素直になることの大切さを学んだ、20歳の初夏。