黒歴史日記。

なで肩です。

歩いて見つけた見栄っ張りについて

僕は毎日、人が少ない朝か夜に散歩に出かける。

 

家から西の方に10分歩くと、

「豊岡マンション」はある。(一応仮名です。)

 

僕は「豊岡マンション」が好きだ。

 

「豊岡マンション」はとても横暴で見栄っ張りなのだ。

 

「豊岡マンション」は築年数の想像がつかないくらいのボロボロの建物だ。外から部屋の様子が見えるのだが、どの部屋も窓までゴミでパンパンになっている。建物の外壁に書かれた「豊岡マンション」の文字はツルがかかっていて見づらい。

 

さらに、僕が思うマンションにしては、かなり規模が小さいうえ、軽い素材でできている。

 

が、あくまで「豊岡マンション」は自分はマンションだ!!と言い張っているのだ。

 

これが「豊岡荘」だったら僕は何の気もなく通り過ぎていただろうが、この建物はあくまで自分をマンションだと名乗っている。

 

その様がなんだかとても愛おしく思えるのだ。

 

3歳の男の子に

「おれ、ひみつけっしゃのぼすやけん、つよいとよ!」

と言われたのを思い出した。その時はいや、お前ヒーロー側じゃなくていいんか。とは思ったが、やっぱり僕はこの子を愛おしく感じた。

 

このときに感じた気持ちと似たような感情を僕は「豊岡マンション」に抱いた。

 

 

 

 

小学校にも中学校にも高校にも自然教室にも少年会館にも、

「多目的室」があった。

傲慢だなぁ。と思った。

 

今まで僕が出会ってきた「多目的室」は全て、ちょっと大きめの教室。というだけだった。

 

僕は多目的室を「少し多めの人数のときの会議」にしか使ったことがない。

 

「多目的室」を多目的に使ったことがない。

というか、ただただちょっと大きめの教室。なだけの空間を、どう多目的に使えばいいというのか。

 

多目的に使ってよ!という割にはあまりに設備が乏しい。

 

だってお前、ただの大きめの教室やぞ。

 

でも、そんな「多目的室」もまた、愛おしく思える。

 

「ちょっと大きめの教室」でしかないのにも関わらず自分のことを

「多目的室」というかなり攻めた名前で名乗るこの部屋にもなんとも可愛げがある。

 

「万能ナイフ」だってそうだ。「万」という桁違いの数字を使っておきながら、実際の機能は8個〜10個くらいで、それもばっさり言ってしまえば、

「切る」「あける」の2種類の使い方しかないのに

自分を「万能ナイフ〜!!」と言い張る。かわいい。

 

「マジックペン」

「マジック」という不思議な力でなんでもこなせちゃいそうな単語を自分の名前につけているにも関わらず、「マジックペン」の機能は"書く"の1つのみだ。

 

"書く"はペンであれば当たり前の機能なのに、自分を「マジック」

と言い張る「マジックペン」かわいい。推せる。

 

 

見栄っ張りは良くないことだと言うけれど、かわいいものじゃないか。

 

 

そんなくだらないことを考えながら、だらだら歩いた。気づいたら家の目の前だった。

 

自分の部屋に戻って、携帯を開く。

大学3年生の僕はこの自粛期間に、就活の情報サイトに登録していた。といってもこのご時世、まだほとんど情報は流れてこない。

 

そのサイトのプロフィールに『趣味』と『特技』を書く欄がある。人様に自慢できるようなものはなにもなく、僕はずっと書けないでいた。

 

 

 

『趣味』→『多趣味』

『特技』→『多芸多才』

 

 

 

と書いてみて、すぐ消した。