黒歴史日記。

なで肩です。

おじさんについて

僕は将来おじさんになる。

 

僕がこの先どんな将来を選択して、どんな仕事に就こうが抗えない事実。

 

僕は将来おじさんになるのだ。

 

 

おじさんは選ばれない。

 

バスや電車に乗ってくる若い人や女性は、空いている座席をキョロキョロ見渡して、おじさんの隣以外の席を探して座る。

 

基本、おじさんの隣にはおじさんしか座らない。

 

 

おじさんは選ばれない。

流行りのスイーツやお出かけスポットのターゲットは、ほとんど若者か女性で、おじさんはそもそも相手にされない。

 

この国のトレンドを決める会議の際には、おじさんの存在はガッツリ無視される。

 

おじさんは許されない。

おじさんはゴルフをしているだけで、

「あー、そうなんですねー。なんか、いかにもですね。」

と周りの反応はよろしくない。

 

おじさんは髪を染めただけで、

「えー、あいつ若作り?」と会社の人に陰で言われる。

 

おじさんはコンタクトに変えただけで

「えー、あいつのくせになんかイメチェン?」と経理の女の子に陰で言われる。

 

おじさんは許されない。

おじさんがカラオケで米津玄師を歌ったら、

「いやいや無理すんなよー。」と入社2年目の女の子に陰で言われる。

 

おじさんがタピオカを飲んでいたら、

「あいつ、どーした?」と会社の女子更衣室がその話題でもちきりになる。

 

おじさんは好きなスポーツをすることも、容姿を気分転換に変えてみるのも、流行りの歌を歌うのも、流行っている飲み物を飲むことさえも許されない。

 

 

おじさんは馬鹿にされる。

 

「えー、それおじさんっぽい。」

「おい、おじさんじゃないんだからー。」

これらは完全に悪口として使われている。

 

「おじさん」とはただ単に男性に対する名称として使われる言葉のはずが、なぜか完全に負の意味を持った言葉として、広く使われてしまっている。

 

存在そのものが、悪いことを表現するときのモノとして使われてしまっている。

 

 

 

「満員電車に揺られるぐったりとした顔のおっさんみたいなつまらない大人に俺はなりたかねぇ!!!」

 

みたいな若者の言葉をよく聞く。

 

 

これは完全に言いがかりだと思う。

 

だって、おじさん。「移動中」だもん。もっと言えば「出勤中」だもん。

 

これは完全に僕の偏見だが、いくら人気のあるキラキラしたアイドルだって、現場に向かう車の中では

わりと魂が抜けたような顔をしているのではないかと思う。

 

だって「出勤中」だもの。

いくらアイドルだって、本当はもう少し家でゆっくりしていたかっただろうし、仕事に向かうときに憂鬱な気持ちが一切無いなんてことはないだろう。

 

満員電車のおじさんは、バリバリ働いてる様子や、家族を大事にしてる様子や、趣味に没頭する様子は一切見られずに、人間みんながまぁまぁ魂が抜けてるであろう時間の「出勤中」の様子だけを見られて

「つまらない人生」

と判断されてしまうのだ。

 

かといって、満員電車でニヤニヤしていても

「なんか、電車にキモいおじさん居てさー。」と朝のホームルーム前に女子高生に悪口を言われる。

 

おじさんになす術はない。

 

 

 

 

当たり前のことだが、おじさんが身を削って戦ってくれているから僕らは生活ができている。おじさんがいてくれたから、僕たちは産まれてくることができた。おじさんが今まで頑張ってきたから、若い世代が活躍できる場があるのだ。

 

この世界があるのはおじさんのおかげなのだ。

 

 

おじさん、本当にありがとう。

 

 

 

実は先ほど、近所の本屋で、おじさんが鬼滅の刃を手に取って

「ほぅ、これが…」といった顔で表紙と裏表紙を見ていたのを目撃した。おじさんは嬉しそうだった。

 

が、僕の視線に気づくと、おじさんはすぐに鬼滅の刃を棚に戻してそそくさと文庫コーナーに移動してしまったのだ。

 

 

 

おじさん。ごめん。