黒歴史日記。

なで肩です。

タバコについて

僕の大学には喫煙所がいくつかある。

 

初めて学内の喫煙所を見たときの僕の率直な感想は

「スカしてんじゃねぇぞ!タコ!!」

だった。

 

喫煙所でタバコを吸っている学生全員が

「はぁ…生きるのってしんどいわ…。」

みたいな哀愁を漂わせているように見えたのだ。

もちろんこれは僕の偏見だが

 

 

それにしても喫煙所にいた人たちはみんな、わざとらしくうつむいたり、天を仰いでいたり、少し姿勢を屈めたりして、遠くを見たり、なんだか気取ってみえた。

 

「いや、私立文系の大学生がそんな人生に疲れた感出すなよ!」

 

と、当時は本気で思った。

 

「さほど忙しくもないし、人生に疲れるほどの挫折もお前らねぇだろうが。」

 

本当に忙しくて、充実した生活を送っている学生にとってはタバコを吸う時間もお金も無駄なはずだと思っていた。

 

 

 

ただそういってる間にどんどん周りに喫煙者が増えていった。こんなに身体に悪いことがわかっているのに、みんながわざわざ吸うのは、それを超えるような良いことが何かタバコにあるのだろうか?

 

まぁ、知りもしないのに批判するのは良くないな!

 

 

という大義名分を手に入れた、ただちょっと大人に憧れてかっこつけたかった僕はまんまと試しに一箱買った。

 

少しドキドキしながら、寮の喫煙所でタバコを口にくわえた。火をつける。つもりがなかなかつかない。10分くらいして、やっと火がついて無事に煙を吸うことができた。このときはまだ、火をつけるときに息を吸わないと火がつかないことを知らなかったのだ。

 

初めて吸ったときの感想は

「あぁ…なるほどぉぉぉ……」

だった。正直言って味は全く美味しいと思えなかった。とにかく苦くて、臭かった。

 

ただ、自分の中で何かがふわっとラクになった感覚はあった。

 

40分くらい立って乗っていた満員電車の座席が空いて、やっと座れた…と落ち着くあの感じ。

 

身体も心もやっと一息つけた…という安心感。

 

それが、タバコを一口吸うだけで味わうことができた。

 

「なるほど…いやタバコ…いいんじゃないか!!…」

と思っていた矢先、ふと目に飛び込んできたのは透明な喫煙所の扉に写ったタバコをくわえた自分の姿だった。

 

吐き気がした。

 

タバコを吸う自分の姿があまりにも似合ってなくて気持ち悪かった。

 

僕が前に馬鹿にしていた、喫煙所にいた連中よりも何倍も醜かった。とにかく似合ってなかった。

中学生が必死に大人のフリをして、カッコつけているようでとにかく見てられなかった。

 

 

僕は慌ててタバコの火を消して、喫煙所を飛び出した。

 

喫煙所を出て気づいた。自分が臭い。

手が、髪が、口が、パーカーの裾が、とにかく臭かった。

 

 

 

 

タバコミュニケーション」という言葉があるように確かにタバコはコミニュケーションのツールとしては非常に良いと思う。

 

喫煙所では、大体みんな灰皿の方に体の正面を向かせているので、話すときは自然と隣同士になる。

高校を出ると意外と人と隣合わせで会話することはない。

 

喫煙所ならではの距離感は、落ち着いて話せる気がする。

 

また、「喫煙者」というだけでなにか同じチームのメンバーみたいな意識になるのか、特に男だけの集まりだと得することも多かった。早い話、気に入られた。

 

それに、ゆっくりゆっくり外の空気と一緒に吸うタバコは香りが良くて、美味しいということもわかった。

 

 

 

だけど、とにかく自分のタバコを吸う姿は醜くて、見たくなかった。

 

僕は日常的にタバコを吸うことはしないことにした。

 

精神的に落ち着かせるために吸うはずのタバコが、逆にどんどん自分のことが嫌になる道具になってしまったからだ。

 

 

 

 

タバコを吸った方が、周りの空気が良くなるとき。

飲んでいて、臭いや自分の醜態がどうでもいいくらい楽しく酔っぱらえたとき。だけ僕はタバコに火をつけることにした。

 

そこまで嫌なら完全に吸わない。と言えばいいのに、

なまじ吸うことでのメリットも知ってしまった僕は、完全にそれを手放してしまうことが、怖くてできなかった。  

 

 

 

それでも、1人で吸おうとはどうしても思えない。

 

 

 

 

 

 

 

3月に買ったハイライトは、まだ16本残っている。