黒歴史日記。

なで肩です。

ラブホテルについて

僕のランニングコースは素敵なことに50分くらい走るとラブホテルが4つ、ほぼ等間隔で現れる。結構な田舎道なのに加え、夜になると明かりも少なくなるので、コースに慣れない間は4つのラブホテルを目印に走っていた。常にキラキラしていて派手な外装はランナーの目印にはぴったりであった。

 

普段は夕方か夜にかけて走ることが多いのだが、冬の時期はそうもいかない。とにかく風が冷たくなるし、すぐに真っ暗になって足元さえも見えなくなる。そこで冬場はなんとか時間を見つけて昼すぎに走っていた。

 

そんな冬のある日、昼すぎに走っているとちょうどラブホテルから一組のカップルがでてきた。2人ともとても爽やかな笑顔をしていた。

今まではラブホテルに出入りする人を見たことがなかったので、改めてこの派手な目印はそういうホテルだったんだなと認識した。

気づくと僕は走る速度を緩めて、そのカップルをずっと目で追ってしまった。カップルはすぐに駐車場に向かってしまったから、ほんとに短い時間ではあったが、カップルを観察している間、僕はとても興奮していた。

 

今までの人生でこの人はさっきまでセックスをしていた!という事実を事前に知った上で人を見るという経験がなかったからだ。

もちろん、街中で出会う人の中にはさっきまでセックスをしていた!人はわりと多い割合でいるのだろう。何食わぬ顔をして仕事をして、勉強をして、運転をして、買い物をして、日々の生活を送っている人が、ついさっきまでは何も身に纏ってないありのままの姿で、自分の一番恥ずかしい部分を見せあって、近づけあって、普段では考えられないような動物的な動きをして…なんてことは大いに考えられる。

 

そう考えると日本もまだまだ捨てたもんじゃないなぁ!!と息が荒くなる。少子化だってさ。なめなんよ、大和魂

 

ただ、この人はさっきまでセックスをしていた!という事実を第三者が知る余地はない。

僕さっきまでセックスしてたんですけど…と律儀に報告してくれる人なんていない。

 

知らない事実は無いも同然だ。

 

多分僕はこれまでたくさんの、さっきまでセックスをしていた人!と一緒に勉強をしたり遊んだりご飯を食べたりしたのだろう。

 

とてももったいないことだが、その事実に僕が気づいたのはラブホテルから出てくる爽やか笑顔のカップルを見てからだった。

 

それからランニングコースにあるラブホテルがすごく気になるようになった。そのときには、ラブホテルは走るときの目印という役割を超越し、僕が走る意味、引いては僕の人生の中の楽しみにまで出世していた。

涙なしでは語れない。ラブホテルのシンデレラストーリーである。

 

それから完全に僕のランニングスタイルは、わざと昼すぎに走ってホテルが近づいたら速度を緩めて横目でチラチラ見るというものに変わった。というかホテルを見るために走ってた。ホテルまでの移動手段が「走る」ってだけだった。

 

長い人類史の中でも走る理由としてはトップクラスにくだらない。メロスも再び激怒するだろう。メロス、激おこプンプン丸。ともかく僕にとってのセリヌンティウスはラブホテルから出てくるカップルだった。そしてセリヌンティウスを見つけるとこの人たちはさっきまで…と考えて、なんともいえない気持ちになるのを楽しんでいた。

 

ちなみに僕自身はラブホテルにいったことはない。もし行くことになったら、ホテルから出るときはランナーの目線は特に気にしようと思う。見つけたら手でも振ってやろうか。

 

改めて思う。「そうだ!セックスをする専用のホテルを作ろう!!」ラブホテルを最初に考えた人は本当にクレイジーで天才だと思う。本当に良い意味で、親の顔が見てみたい。きっと素敵な教育方針の下で育てられたのだろう。

 

僕みたいな凡人はこの先何年かかってもラブホテルを最初に思いつくような天才には勝てないと思う。もし僕がその人と同じ会議室にいたとしても「セックスするためだけのホテルだとこのやろう!!!」「卑猥すぎるだろ!!」「需要はあるのか!!」「恥ずかしがってみんな来ないのではないか!!」などなどありきたりで、つまらないことしか言えないだろう。

 

そう考えると僕の人生は味気がないような気がしてきた。

 

くそ。どうしてくれよう。ラブホテル。