黒歴史日記。

なで肩です。

しあわせ時間について

ネガティブな話が続いたので今日は明るい話をしたいと思う。「なにをしているときが1番しあわせ?」

たまーーに聞かれる。試されてるなぁ…と思う。

単に趣味嗜好を聞けばいいものを「しあわせ」という僕の感性自体もまとめて聞いてくる。

 

ここで相手の理解が及ばないことを話したら単に「趣味が合わない奴」にとどまらず「自分とは合わない奴」と認定される。「合わない奴認定」を受けると深い仲になれないのはもちろん、仕事すら振ってもらえなくなったりもする。ちなみにここで僕が逆にそっちはどうなの?と聞くとほとんどは「趣味をやっているとき」と返されるから「あぁ、この人はこんなに深く考えてなかったんだなぁ。申し訳ない。。」と反省するのが常だ。

 

話が逸れた。ここからはポジティブ全開しあわせ時間トークである。

 

僕のしあわせ時間は2つある。

1つ目は旅行後の「後帰り」である。

僕にとって旅行は「非現実」をひたすら楽しむ時間だ。だから旅行中は常にふわふわしているし、なんだかコンビニでお菓子を買うだけでもドキドキしてしまう。そんな旅行も最終日になると「非現実」がじわじわと薄れていく。「今から帰るのかぁ。」「帰ったらあれやらなきゃ…」ゆっくりだが着実に「現実」が迫ってくるのだ。

普段生活しているのは紛れもない、「現実」であって別に不幸なものでもなんでもないのだが、とにかく旅行の最終日は「現実」が怖くて怖くてたまらなくなる。

 

迫ってくる「現実」を避けるため、僕はギリギリまで旅行先に留まる。そしてなんとか、帰りの飛行機や電車に乗る。そこで僕はその日は家には帰らず空港や駅近くの1番安いビジネスホテルに泊まって翌日の午前中に家に帰る。これが「前乗り」ならぬ「後帰り」だ。

 

このビジネスホテル代の4000円を僕はもったいないとは全く思わない。今日は「後帰り」ができる!と考えるだけで旅行中「現実」が襲ってくることはない。また「後帰り」先のビジネスホテルもびっくりするくらい楽しい。なにが楽しいのかを書くとキリがないがとにかく、ビジネスホテルの狭い部屋は「現実」と「非現実」の境目にある束の間の楽園に感じられる。この楽園に4時間バイトをすれば踏み込めるのだ。そのためなら僕は喜んで働く。

 

小学生の時に言われた「帰るまでが遠足ですよ。」を多分僕は日本で1番真に受けている。

帰らなければ遠足は続く。大学生になった僕は「帰らない」を選択できる。遠足の帰りのバスに乗りたくなくて、先生の呼ぶ声が聞こえないようにひたすら高い所に登っていた小学生の頃の僕とは違う。いや、根本はなにも違わないのか。

なんにせよあの時探していた「楽園」は必死に登ったあの赤い遊具のてっぺんではなく、京急蒲田駅から徒歩5分のホテルにあった。

 

2つ目のしあわせ時間はパン屋さんでパンを買うことだ。

 

僕は一人暮らしだから食費は1番に切り詰められる。普段食べるパンは近くのスーパーで20時以降半額シールが貼られる50円のパンだ。何パンなのかは、どうでもよくてそのときシールが貼られてるパンを次の日の朝ごはんに食べる。

 

パン屋さんのパンを買うときは誰かに会いに行く前だ。

 

当時付き合っていた彼女は一人暮らしだったから、僕はよく彼女の家に行っていた。そこでたまにパン屋さんのパンを手土産代わりに持っていくことがあった。パン屋さんには、普段食べているパンより何倍も高いパンが並んでいるが、不思議と値札はまったく目に入らない。あの子が好きそうなパンはなんだろうか…と店内を隅々まで見て回る。「こういうの好きだよね。」「これはパイナップルが入ってなかったらよかったのにね。」「今日はなんだか甘いのばっかりになっちゃったね。」「こんなに食べ切れるかな。」まるで彼女と話してるかのような気持ちになれる。この時間が僕にとって、とてもしあわせだ。この時間は僕一人では絶対に過ごせない。大切な人がいるからこそのしあわせ時間だ。

 

心なしかパン屋さんの袋を抱えて歩いている人は、少し顔も朗らかに見える。みんな大切な人のためにパンを選んで買っていったのだろう。

 

帰省中ふと思い立って、母親と弟のためにパン屋さんのパンを買うことにした。

そのときには彼女と別れていたから、久しぶりに大切な人にパンを買うため、パン屋さんを訪れた。

店に入るとバターの優しい香りに包まれて。やっぱり高いパンが並んでて。色んな形、色んな固さのパンがあって。なにを買っていったら喜んでくれるだろうか…と考えて。やっぱりパン屋さんに居る時間はしあわせで。そのときだった。誰に話しかけられたわけでもないし、誰かに触れられたわけでもない。それなのに、うまく言えないがなんだか誰かに大切にされた気がした。まだ選んでる最中なのに「ありがとう」が聞こえた気がした。

 

パンを6つ選んでレジに運ぶとレジのお姉さんに「どうかされましたか?」と聞かれた。

 

僕は泣いていた。